静脈麻酔?局所麻酔?中絶手術の麻酔と痛み対策の選び方
妊娠初期の人工妊娠中絶で使われる麻酔は、主に静脈麻酔(鎮静)と局所麻酔です。
本記事では、手術法(吸引法)との関係、痛みの実際、安全性と副作用、当日の注意、費用や公的支援について解説します。
中絶で用いられる麻酔の種類と選び方
静脈麻酔(鎮静)
- 点滴で麻酔薬を投与し、眠っている間に手術を行う
- 鎮痛剤も併用され、痛みを感じにくくする
- 手術中の記憶が残りにくい
- 短時間の手術に適しているため、中絶手術で広く使われている
局所麻酔
- 手術部位の痛みや感覚だけを一時的に遮断する
- 意識はあり、手術中の声や音が聞こえることがある
- 注射時の痛みがある
- 作用時間が短いため、長時間の処置には不向き
- 広範囲の処置には適さない
どちらを選ぶかの目安
強い不安がある、手術中の記憶を避けたい、短時間で負担を減らしたい場合は静脈麻酔が候補になります。
持病や服薬が多い、鎮静が不安な場合は局所麻酔や併用を含めて個別にご相談ください。
手術法との関係|吸引法が主流
近年、日本では掻爬法(ソウハ法)から吸引法へと主流が移行しています。吸引法は短時間で完了する設計のため、静脈麻酔(鎮静)や局所麻酔の併用が検討されます。
当院では、手動吸引法(MVA)にて全例処置しております。日本産婦人科学会で推奨されており、微妙な調整ができる分、子宮内膜等の組織を傷つけるリスクが少ない方法です。中絶手術での感染リスクも低く、お身体に負担の少ない処置を目指しております。
痛みはどれくらい?手術中と術後の実際
静脈麻酔(鎮静を含む)
手術中の痛みは基本的に感じません。覚醒後に下腹部の鈍痛や生理痛様の違和感が出ることがありますが、多くは短時間で改善し、鎮痛薬で対応します。
局所麻酔のみ
痛みは抑えられても、圧迫感や牽引感が残る場合があります。不安が強い方は鎮静の追加をご相談いただけます。
痛み対策のコツ
術前の不安を医師に共有し、鎮痛薬の使い方を事前に確認します。術後は安静・保温・水分補給を意識してください。
静脈麻酔の安全性と副作用
麻酔は安全性を高めるために重要ですが、すべての方に絶対安全ではありません。まれに呼吸抑制などの合併症が起こり得るため、脈拍・血圧・血中酸素のモニタリングと、経験のあるスタッフ体制の下で実施します。過鎮静を避ける投与管理や取り違い防止など、安全対策を徹底しています。
当日の注意点|安全のための基本
- 絶飲食
麻酔前に胃に内容物があると誤嚥の危険があるため、指示どおり飲食制限をお守りください。 - 禁煙
喫煙は術後の咳・痰、呼吸器合併症のリスクを高めます。手術が決まったら禁煙をおすすめします。 - 内服薬・持病
常用薬やアレルギー歴、麻酔歴は必ず申告してください。麻酔方法・用量の判断に直結します。 - 付き添いと帰宅手段
鎮静後は眠気やふらつきが残ることがあります。当日の車・自転車運転は避け、公共交通機関や付き添いをご検討ください。
費用と公的支援の基礎知識
以下のような症状がある場合は、婦人科での診察を早めに受けましょう
- 保険適用
経済的理由による人工妊娠中絶は原則自費診療です。費用は医療機関により異なりますので、「手術料(麻酔・前処置・薬剤を含むか)」「術前検査」「術後診察」の有無を確認してください。 - 出産育児一時金(中期)
妊娠12週(85日)以上の早産・死産・流産・人工妊娠中絶は支給対象です。最新情報は公的窓口でご確認ください。 - 生活保護の医療扶助
困窮がある場合は、要件を満たせば適用対象となり得ます。必要に応じて母体保護法に基づく手続きも確認します。※当院では対応しておりません。
迷ったときの判断基準
- 強い不安がある/手術中の記憶を避けたい場合は、静脈麻酔(鎮静)を第一候補にします。
- 持病・服薬が多い場合は、麻酔科と連携し個別に対応します。局所麻酔や低用量鎮静も含めて検討します。
- 費用を把握したい場合は、自費項目の内訳と公的支援の可否を事前に確認します。
よくある質問
Q.静脈麻酔と全身麻酔は違いますか?
A. 多くの静脈麻酔は気管挿管を伴わない鎮静で、短時間の吸引法に適しています。全身麻酔は呼吸管理を含むより深い麻酔で、症例や施設体制により選択されます。
Q. 局所麻酔だけだと痛いですか?
A. 痛みは抑えられますが、圧迫や牽引の感覚が残ることがあります。不安が強い場合は鎮静の追加をご相談ください。
Q. 麻酔の合併症が心配です。
A. まれに呼吸抑制などが起こる可能性があります。術前評価とモニタリング、熟練したスタッフ体制でリスクを減らします。既往歴や内服薬、アレルギーは必ずお知らせください。
Q. 食事・水分摂取の制限はありますか?
A. 食事は手術当日の0時までに済ませてください。水分摂取は指示通りに済ませてください。
まとめ
1.最適な麻酔は、週数・体質・手術法・施設体制によって変わります。吸引法が主流の現在、静脈麻酔(鎮静)は負担軽減に役立ち、局所麻酔は感覚が残る場合があります。
2.安全性は「術前申告」「飲食制限の遵守」「十分なモニタリング体制」で高められます。
3.費用は自費が原則です。12週(85日)以上は出産育児一時金、困窮時は医療扶助の選択肢があります。
4.迷われた場合は、カウンセリングで個別にご相談ください。
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