中絶手術は前処置が必要?手術は痛い?
中絶手術の際の前処置がなぜ必要か疑問に思うことはないでしょうか。中絶手術をおこなううえで、前処置は必要になるケースがあります。
本記事では、中絶手術の前処置の目的やリスクを解説します。手術時の麻酔の種類や中絶手術後に起こる可能性がある症状もご紹介しますので、中絶手術を受ける前に知識として把握をしておきましょう。
中絶手術の前処置(術前処置)とは?
妊娠中絶手術を実施する前に、子宮頸管を広げる拡張作用と、子宮を柔らかくする熟化作用の処置をおこなう必要があります。これが中絶手術の前処置です。
具体的には、子宮頸管内にラミナリアやダイラパン、ラミセルといった棒状の子宮頸管拡張材・子宮頸管熟化材を挿入します。
いずれも子宮頸管内でスポンジのように水分を含むと大きくなり、子宮の入り口を押し広げながら柔らかくしてくれるのが特徴です。
基本的に妊娠12週以下の場合は、前処置を実施し、吸引法(子宮内容物をストロー状の器具を用いて吸い出す)によって手術をおこないます。
中絶手術の前処置をしないメリットとリスク
中絶手術の前処置をしないメリットは、母体への負担が少し和らぐ点です。前処置をすると、子宮の入り口を広げるために、痛みを伴うケースがあるため、この分の痛みがなくなります。
また、前処置をしないことで、日帰り手術が可能になるため、通院回数が少なくなります。
一般的に3時間程度の手術時間で終わるため、時間的な負担も抑えられるでしょう。
一方で、前処置をしないリスクは子宮頸管が広がっていないことによって手術がやりにくくなる点です。
当院では、完全無痛の中絶手術を目指し、母体への負担も考え、術前診察(処置)をおこなっております。日帰りでの手術は推奨しておりません。
手術の麻酔について
中絶手術をおこなう場合の麻酔の種類は以下のとおりです。
- 局所麻酔
- 静脈麻酔
- ブロック麻酔(腰椎麻酔・硬膜外麻酔)
- 全身麻酔
患者さんの状況に応じて、医師の判断のもと、適切な麻酔方法が選択されます。
局所麻酔
局所麻酔とは、痛みを感じさせない麻酔状態を部分的に引き起こすための麻酔です。
おもに傷を縫う外科手術や歯科治療などの術野が限定される症例で活用されます。
静脈麻酔
静脈麻酔とは、うとうと眠っているような状態にするための麻酔です。
短時間で痛みが軽い手術に適している一方で、万が一強い痛みが生じた場合は目を覚ましてしまう場合があります。
ブロック麻酔(腰椎麻酔・硬膜外麻酔)
ブロック麻酔(腰椎麻酔・硬膜外麻酔)とは、体の中心に存在する脊髄の神経束に少量の麻酔薬を注入し、神経の根本をブロックして痛みを取り除く麻酔です。
全身麻酔
全身麻酔とは、長時間、広範囲の手術をおこなう際に適した麻酔です。
年齢・病歴・服薬歴・体質などを十分に考慮した上で選択されます。
中絶手術後に起こる可能性がある症状
患者様が心配になる中絶後の症状については以下の通りです。
- 痛み
- 吐き気・嘔吐
- めまい・頭痛
- 出血
- 健忘
- PAS(中絶後遺症候群)
手術を受ける前は、上記のリスクをしっかり理解したうえで臨みましょう。
痛み
術後数日から1週間程度、生理痛に似た痛みが生じるケースがあります。
これは子宮が元の状態に戻ろうとするために生じる痛みです。
また、子宮の内容物を外に出すために起こる子宮の収縮に伴う痛みでもあります。
痛みが続く場合は、痛み止めを服用してください。
吐き気・嘔吐
術後の合併症として生じるケースがあります。
麻酔の影響で生じる場合もあり、そのときは術後点滴などで対応します。
めまい・頭痛
手術時の麻酔の影響により、めまいや頭痛が起こるケースがあります。
覚醒後30分経過すると、症状が治まるとされています。念のため、術後は無理をせず、安静にしておきましょう。
出血
術後1〜2週間程度は出血が起こるケースがあります。
出血量は個人差があり、数日してから塊として出たり、おりものに血が混ざって出たりする場合があります。
出血量がさほどなく、体調不良などになっていなければ問題ないといえるでしょう。
健忘
ごくまれに麻酔の影響で一時的に記憶がなくなる現象が起こります。
しかし、あくまで一過性の症状であるため、心配はありません。
PAS(中絶後遺症候群)
PAS(中絶後遺症候群)は、妊娠中絶手術による感情の抑圧により発症したPTSD(心的外傷ストレス)の一種です。
まれに術後に発症するケースがあります。
中絶手術を受ける際はリスクをしっかり把握しておこう
中絶手術は基本的に体に負担がかかるものです。そのため、場合によっては、術後にさまざまな症状が起こるおそれがあります。
手術を受ける前に、必ず担当の医師から説明を聞き、リスクを把握しておくことが大切です。起こりうるリスクを理解したうえで、適切な手術を受けましょう。