中絶の知識

望まない中絶につながる!?先天性風しん症候群をご存知ですか?

赤松 敬之(あかまつ たかゆき)

先天性風しん症候群をご存知でしょうか。
妊婦が風しんにかかると、先天性の疾患を抱えた胎児が生まれるケースにつながります。

本記事では風しんや先天性風しん症候群について解説します。
発症の原因や治療法・予防法を知り、万が一風しんにかかった際に迅速かつ適切な処置を受けられるよう準備を進めておきましょう。

大事な胎児、そして自分を守るために、風しんに関して必要な知識を蓄えておくことが大切です。
もし不明な点があれば医療機関を受診し、担当の医師に相談しましょう。

風しんについて

風しんとは、風しんウイルスによって起こる急性の発疹性感染症です。
風しんに対する免疫力をもたない集団では、1人の風しん患者さんから6人程度に感染する力を有します。

風しんに感染すると、約2〜3週間後に発疹・発熱・リンパ節の腫れなどの症状が起こります。

子どもが罹患する場合は比較的軽い症状で済むものの、まれに脳炎や血小板減少性紫斑(血液中の血小板が減少することで出血しやすくなる)などの合併症が2,000〜5,000人に1人ぐらいの割合で発生するケースがあるでしょう。

風しんに対する免疫力が弱い妊娠20週頃までの女性が風しんウイルスに感染すると、心臓・耳・目などに障害をもつ先天性風しん症候群の子どもが生まれるリスクが高まります。

妊娠1ヵ月で罹患した場合は50%以上、妊娠2ヵ月の場合は35%の確率で先天性風しん症候群の子どもが誕生するとされています。

先天性風しん症候群の原因

先天性風しん症候群の病原体は、風しんウイルスです。
風しんウイルスに対する免疫がない妊婦が風しんウイルスに感染すると、胎盤を経由して胎児に感染します。

先天性風しん症候群は、妊娠初期に母親が風しんウイルスに感染することで発症します。
母親に症状がみられない状態であっても発症するケースがあるでしょう。

感染後の治療方法・予防方法


先天性風しん症候群には、治療法がありません。
そのため、感染後は対症療法をおこない、症状を和らげる必要があります。

先天性風しん症候群には、心疾患・難聴・白内障の3大症状が起こります。
心疾患の場合は、軽度であれば自然治癒するものの、手術が必要になるケースもあるでしょう。
白内障に関しても、手術が必要になったタイミングで濁り部分を摘出し、視力回復を図ります。
摘出後は人工水晶体を使用することがあり、遠近調節するのが難しくなるケースがあります。
難聴の場合は、人工内耳によって治療が進められる場合があるでしょう。

風しん予防対策を知ろう

風しんを予防するためには、予防接種が有効な手段です。
予防接種では、1〜2回の接種を受けることが望ましいとされています。

風しんワクチンを接種することで、95%以上の人が風しんウイルスに対する免疫を獲得することが可能になるとされています。

また、2回の接種を受けることで、1回の接種では免疫力がつかなかった方の多くに免疫を付与することが可能です。

さらにワクチン接種後、時間の経過とともに免疫力が低下してきた人に対しては、追加のワクチンを受けることで免疫力を強める効果があります。

1回目のワクチン接種後の副反応として最も多くみられるのが発熱です。
接種後1週間程度で多くみられるようになり、接種後2週間以内に発熱が生じる方は約13%存在します。
また、接種後1週間前後に発疹を発症する方が数%、アレルギー反応として蕁麻疹を発症する方が約3%、発熱にともなう痙攣が起こる方が約0.3%存在します。

2回目のワクチン接種時では、接種局所の反応がみられる場合がありますが、発熱や発疹の発症頻度はかなり低いでしょう。

まれに起こる副反応として脳炎・脳症が100〜150万人に1人以下の頻度で報告されていますが、ワクチンとの因果関係がはっきりされていない場合も含まれています。

「妊娠しているのですが、風しんの流行が不安です。どうしたらよいでしょうか?」
このような不安を抱えている方がいるのではないでしょうか。

妊娠初期(20週以前)に風しんにかかると胎児が感染し、先天性心疾患や白内障、難聴などをもつ先天性風しん症候群をもって生まれてくるリスクがあります。

妊娠前であればワクチン接種を受けることができますが、既に妊娠しているのであれば、接種を受けることができません。
そのため、とくに風しんが発生している地域では可能な限り外出を控え、人ごみに近づかないようにすることが重要です。

出産後は早い段階で風しんの予防接種を受けることをもおすすめします。
また、風しんの抗体価が低い妊婦の同居家族に関しては、風しんにかかったことがなく、2回の予防接種歴がない場合、風しんの免疫の有無を確認するための抗体検査を受けましょう。

もし、風しんの抗体価が低いことが判明した場合は妊婦とお腹の子どもを守るため、予防接種を受けることを検討してください。

LINEでのご相談

監修医師
赤松 敬之
赤松 敬之
医療法人星敬会 西梅田シティクリニック 理事長
平成25年3月 近畿大学医学部卒業。平成26年4月から済生会茨木病院にて内科、外科全般の研修を行う。平成28年4月より三木山陽病院にて消化器、糖尿病内科を中心に、内視鏡から内科全般にわたり研鑽を積みながら勤務。「何でも診る」をモットーに掲げる病院での勤務の中で、働き世代の忙しい方が通いやすいクリニックを目指し、令和2年9月西梅田シティクリニック開設。
Recommend
こちらの記事もどうぞ
記事URLをコピーしました