未受診妊婦と飛び込み出産のリスク|母体と胎児への影響と中絶を含む選択肢

未受診妊婦 リスク
赤松 敬之(あかまつ たかゆき)

妊娠したら産婦人科で妊婦健診を受けることが基本ですが、なかには受診しないまま出産を迎える 未受診妊婦 がいます。未受診のまま突然分娩を迎える「飛び込み出産」は、母体や胎児に深刻なリスクをもたらします。

この記事では、未受診妊婦が増える背景や心理、飛び込み出産の危険性、中絶を含む人生の選択肢について解説します。

未受診妊婦と飛び込み出産のリスク

未受診妊婦とは、妊娠初期から本来受けるべき健診を受けていない妊婦を指します。

健診を受けることで、妊婦自身の病気や胎児の異常を早期に把握し、必要に応じて治療や分娩方法を選択できます。しかし未受診のままでは、妊娠週数や母体の状態が不明なまま分娩を迎えることになり、次のようなリスクが高まります。

  • 胎児に心疾患や肺の異常があった場合、分娩直後に急変する可能性
  • 出産時の異常(出血・胎盤早期剥離など)の見逃し
  • 分娩施設が整っておらず、適切な医療を受けられない

結果として、母体・胎児ともに命の危険にさらされることがあります。

中絶と未受診妊婦の関係 ― 社会的背景

未受診妊婦が生じる背景の一つに、中絶の問題 があります。

調査では「胎児異常への不安」「経済状況の悪化」「パートナーとの別離」などを理由に出産を断念するケースが報告されています。特に初期妊娠の中絶では約7割がパートナーの反対を受けていたとのデータもあり、十分なコミュニケーションが取れないことが要因になっています。

なぜ受診できないのか?未受診妊婦の心理

大阪産婦人科医会の調査では、妊婦健診を受けなかった理由として次が挙げられています。

  • 経済的困難(約30%)
  • 相手に家庭があるなどの家庭事情(16%)
  • 誰にも相談できない孤立(12%)
  • 妊娠に関する知識不足(約10%)

つまり「お金の問題」「人間関係の問題」「孤立」「知識不足」が大きな要因となっています。

飛び込み出産がもたらす母体・胎児への影響

調査によると、未受診妊婦の飛び込み出産には深刻なリスクが伴います。

  • 胎児死亡率:通常の約15倍
  • 胎盤早期剥離:通常の約10倍
  • 治療を要する新生児(呼吸障害など):通常の約20倍

救急搬送の際、受け入れを拒否されるケースも報告されており、母子ともに命の危険が高まります。

中絶は女性の人生における選択肢

中絶は、女性にとって人生を考える上での一つの選択肢です。

  • 妊娠22週未満(21週6日まで)は母体保護法のもとで中絶可能
  • 初期中絶は身体的負担が比較的軽いが、中期中絶は入院・費用・精神的負担が大きい
  • 「産む」「産まない」どちらも尊重されるべき選択

重要なのは、避妊を徹底し、望まない妊娠を繰り返さないことです。
コンドームピルIUS(ミレーナ)などの避妊具を正しく活用しましょう。

まとめ

  • 未受診妊婦と飛び込み出産は、母体と胎児に重大なリスクをもたらす
  • 背景には経済的困難やパートナーとの関係不和、社会的孤立などがある
  • 中絶は女性にとって正当な選択肢であり、早期の相談と避妊対策が重要
  • 一人で抱え込まず、必ず産婦人科や専門機関に相談を

参考文献

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監修医師
赤松 敬之
赤松 敬之
医療法人星敬会 西梅田シティクリニック 理事長
平成25年3月 近畿大学医学部卒業。平成26年4月から済生会茨木病院にて内科、外科全般の研修を行う。平成28年4月より三木山陽病院にて消化器、糖尿病内科を中心に、内視鏡から内科全般にわたり研鑽を積みながら勤務。「何でも診る」をモットーに掲げる病院での勤務の中で、働き世代の忙しい方が通いやすいクリニックを目指し、令和2年9月西梅田シティクリニック開設。
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