妊娠週数別の中絶方法とリスク

赤松 敬之(あかまつ たかゆき)

望まない妊娠ややむを得ない事情による中絶は、心身に大きな負担を伴います。
特に妊娠週数によって方法やリスクが異なるため、正しい知識を持つことが大切です。
ここでは、初期妊娠(〜8週)、10週以降、中期(12〜16週)、妊娠後期(22週以降)といった妊娠週数別に、中絶方法の特徴と注意点を紹介します。

初期妊娠(〜8週)で選ばれる経口薬の利点とリスク

初期妊娠(妊娠9週未満)では、内服薬を使った方法が選ばれることがあります。
主にミフェプリストンという薬で妊娠の維持を止め、その後ミソプロストールという薬で子宮を収縮させ、妊娠内容物を体外へ排出します。

内服薬による中絶は、おおまかに次のような流れで行われます。
①まず医師の診察後に服薬を開始
②数時間から数日以内に出血や強い下腹部痛が起こり、自然に内容物が排出される
③その後、排出が不十分な場合には追加の薬や外科的処置を行うこともある

この方法には、身体への物理的な処置が不要で子宮へのダメージが少ないことや、自宅などで処置ができるため心理的負担が軽減されるという利点があります。
一方で、個人差があり完全に排出されないことがあることや、出血量が多くなること強い痛みや吐き気などの副作用がみられることもあります。
必ず医師の指導・管理下で行う必要があることを忘れてはいけません。

10週以降の手術方法:吸引法と掻爬法

妊娠10週を超えると薬だけでの中絶は難しくなり、外科的手術が主な方法となります。
代表的なのが吸引法(真空吸引法:MVA法など)と掻爬(そうは)法です。

吸引法(真空吸引法:MVA法など)

子宮の中に細い柔らかいカニューレ(管)を入れ、電動または手動で子宮内の内容物を吸い出す方法です。
手術時間は5〜10分程度と短く、子宮への損傷が少ないとされています。

掻爬(そうは)法

キュレットという器具を使い、子宮内膜と妊娠内容物をかき取る方法です。
吸引法よりも侵襲が大きく、子宮内癒着や穿孔などの合併症リスクがやや高いとされます。
どちらの方法も日帰りまたは短期入院で行われることが多く、術後には数日間、出血や腹痛が続く場合があります。

中絶を考えている方は、妊娠週数が進む前に医師へ相談することが大切です。
特に12週を超えると中期中絶となり、母体への負担やリスクが増すため、可能であれば10週前後までに決断するのが安心です。

中期中絶(12〜16週)の外科的手術

妊娠12〜16週では「中期中絶」とされ、内容物の大きさや骨の形成などから、より慎重で複雑な手術が必要になります。
代表的なのが頸管拡張・内容除去術(D&E法)です。

おおまかに次のような流れで行われます。
①手術の前日にラミナリアという海藻由来の棒やバルーンなどを子宮頸管に挿入し、時間をかけてゆっくりと広げる。
②翌日以降に子宮の中の胎児や付属物を器具で除去。
処置は数時間かかることもあり、その分出血や感染、子宮損傷などのリスクも高くなります。

中期中絶は精神的にも非常に大きな負担がかかります。
そのため、事前に医師から十分な説明を受け、家族などの支えも得ることが大切です。

妊娠後期の中絶の難しさ

妊娠22週以降の後期中絶は、原則として法律で禁止されています。
ただし、母体の生命を守るためや重度の健康被害が予想される場合など、例外的に認められるケースもあります。
しかし後期中絶は医学的にも非常に難易度が高く、実際には出産とほぼ同じリスクを伴う大きな手術となります。
妊娠が進んでいる分、出血や合併症のリスクも増加し、母体への身体的負担も非常に大きくなります。
さらに、手術そのものだけでなく、心理的なサポートや社会的支援も不可欠であり、身体だけでなく心のケアも重要な課題となります。
そのため、もし中絶を考えている場合は、できるだけ早い段階で医療機関に相談し、自分にとって最善の選択を見つけることが大切です。

中絶手術後の心理的側面とケアの重要性

中絶は身体的な処置であるだけでなく、心にも大きな影響を与える出来事です。
手術のあと、気分が落ち込んだり、不安や不眠に悩まされたり、自分を責める気持ちを抱える方も少なくありません。
そうした心の傷を癒していくためには、医療機関でのカウンセリングや、家族や友人といった身近な人たちの支えがとても大切です。
そして何よりも、自分一人で抱え込まず、専門家や信頼できる誰かに相談することをためらわないでほしいと思います。それが回復への一歩となり、心を少しずつ楽にしてくれるはずです。

最後に

中絶は週数によって方法や母体へのリスクが変わるだけでなく、心の負担も大きい選択です。
納得できる形で未来を考えられるよう、正しい情報を知り早めの対応をすることが大事です。

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監修医師
赤松 敬之
赤松 敬之
医療法人星敬会 西梅田シティクリニック 理事長
平成25年3月 近畿大学医学部卒業。平成26年4月から済生会茨木病院にて内科、外科全般の研修を行う。平成28年4月より三木山陽病院にて消化器、糖尿病内科を中心に、内視鏡から内科全般にわたり研鑽を積みながら勤務。「何でも診る」をモットーに掲げる病院での勤務の中で、働き世代の忙しい方が通いやすいクリニックを目指し、令和2年9月西梅田シティクリニック開設。
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