出生前診断でダウン症と分かったら中絶できる?検査の正確性や選択肢を解説

コラム投稿者用

出生前診断の結果を受けて、頭が真っ白になってしまった。
そんな方もいるのではないでしょうか。
「中絶はできるの?」「いつまでに決断すればいい?」「検査結果は本当に正確なの?」
不安なまま、次の診察まで何日も待ち続けるのは、とてもつらいですよね。

この記事では、出生前診断でダウン症の可能性を示された場合の、法律・検査の正確性・選択肢・費用を整理してお伝えします。
正確な知識を手に入れることで、自分やパートナーと冷静に話し合うための土台を作れます。

出生前診断でダウン症と分かった場合、中絶はできる?

結論からお伝えすると、日本では「ダウン症だから」という理由だけでは、法律上、中絶は認められていません。
ただし、一定の条件を満たせば中絶が可能です。

中絶が認められるケース

日本の中絶を定めた法律は「母体保護法(ぼたいほごほう)」です。
この法律では、中絶が認められる条件が2つ挙げられています。

  1. 妊娠や出産を続けることが、身体的・経済的な理由によって、母体の健康を大きく損なうおそれがある場合
  2. 暴行や脅迫によって妊娠した場合

つまり、「胎児に異常があるから」という理由は、条文に直接書かれていません。
一方で、育児への精神的・経済的な負担が大きいと判断されるケースでは、1つ目の条件に当てはまると解釈されることがあります。

中絶ができる条件と注意点

中絶手術を受けられるのは、都道府県の医師会が指定した「指定医師(母体保護法指定医)」のいる医療機関に限られます。
また、基本的に本人とパートナー(配偶者)両方の同意書が欠かせません。
ただし、未婚の場合や、相手が不明・意思表示できない状況では、本人の同意だけで手術を受けられる場合もあります。

中絶を考えている場合は、担当の医師や遺伝カウンセラーに早めに相談しましょう。
週数が進むほど、選べる選択肢が少なくなります。

中絶はいつまで可能?

母体保護法により、中絶手術を受けられるのは妊娠22週未満(妊娠21週6日)までと定められています。
週数が進むほど、身体への負担と費用が大きくなります。
出生前診断の結果を受けてから意思決定までの時間は限られているため、早めに医師へ相談することが大切です。

妊娠週数ごとの判断基準

母体保護法では、中絶が可能な期間は「妊娠22週未満(妊娠21週6日)まで」と定められています。
妊娠週数によって、手術の方法と区分が変わります。
下の表を参考にしてください。

初期中絶中期中絶
対象週数〜妊娠11週6日妊娠12週〜21週6日
手術費用の目安7〜10万円程度40〜60万円程度
入院の有無不要(日帰り)4〜6日程度の入院が必要
役所への届出不要死産届・死産証書の提出が必要
出産育児一時金対象外申請可(約42万円)

※費用は医療機関によって異なります。必ず受診前に各医療機関へご確認ください。

22週未満に間に合わせるためには、早めに検査を受け、結果を踏まえた意思決定の時間を確保することが欠かせません。

時期によるリスクと違い

初期中絶と中期中絶では、心身への負担がまったく異なります。
中期中絶手術は体への負担が大きく、術前処置でも強い痛みを伴います。
具体的には、子宮収縮剤を使って人工的に陣痛を起こすため、手術中も痛みが生じます。
精神的な負担も、中期中絶のほうが大きくなりがちです。
時間的な余裕をもって判断するためにも、早めに検査を受けることが選択肢を広げることにつながります。

出生前診断の結果はどこまで正確?

検査結果が「陽性」と出ても、それはダウン症の可能性が高いことを示すものであり、確定診断ではありません。
検査の種類によって正確性が異なるため、結果の意味を正しく理解することが欠かせません。

スクリーニング検査の特徴

出生前診断には、「確率を調べる検査(非確定検査)」と「診断を確定する検査(確定検査)」の2種類が存在します。
厚生労働省の専門委員会報告書によると、非確定検査に該当するのは、採血で行うNIPT・クアトロ検査・コンバインド検査、超音波で首の後ろのむくみを確認する胎児超音波検査などです。
これらは母体への負担が少なく、流産のリスクが低い点が特徴です。

陽性結果の意味

NIPTなどのスクリーニング検査で「陽性」と出ても、確定診断ではありません。陽性とは「ダウン症の可能性が高い」という意味であり、「確実にダウン症である」という意味ではないのです。
実際に、陽性と出た中には「偽陽性(ぎようせい)」、つまり実際には異常がなかったケースも一定数含まれます。

確定診断の必要性

本当にダウン症かどうかをはっきりさせるには、確定診断(羊水検査または絨毛検査)が必要です。それぞれの検査の概要は以下の通りです。

  • 羊水検査(ようすいけんさ):妊娠15週以降に実施します。お腹に針を刺して羊水を採取し、染色体を調べます。
  • 絨毛検査(じゅうもうけんさ):妊娠11〜14週ごろに受けられます。結果が出るまで3週間程度かかる場合があります。

どちらも、ごくわずかながら流産のリスクを伴います。
厚生労働省の報告書によると、羊水検査は約0.2〜0.33%程度、絨毛検査は約1%程度とされています。
受ける検査の種類によってリスクが異なるため、医師に詳しく確認しましょう。

確定診断を受けるメリットとデメリット

確定診断の最大のメリットは、結果が「確実」である点です。
判断の根拠が明確になるため、その後の選択に納得感が生まれやすくなります。
デメリットは、結果が出るまでに時間がかかること、ごくわずかながら流産のリスクがあることが挙げられます。
検査を受けるかどうか自体も、医師や遺伝カウンセラーと相談しながら慎重に決めましょう。

出生前診断で陽性が出た後の流れ

陽性の結果を受けて、すぐに中絶を決断する必要はありません。
まずは担当医に連絡し、結果の意味を正確に確認することが最初のステップです。
焦らず、一つずつ情報を整理しましょう。

検査結果後に行うべきこと

陽性の結果を受け取った直後は、焦って判断する必要はありません。まず深呼吸して、やるべきことを一つずつ整理しましょう。

  1. 担当医に連絡する:結果の詳細な意味を確認します
  2. 確定診断を検討する:スクリーニング検査だけでは確定できないため、医師と相談します
  3. 遺伝カウンセリングを予約する:専門家に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが整理されます

医師との相談と今後の選択

医師との相談では、「今後の選択肢」を丁寧に説明してもらうことが大切です。
妊娠を継続するか、中絶を選ぶかという大きな判断は、医師に急かされてするものではありません。
遺伝カウンセリングとは、検査の意味・選択肢・心理的な影響などを専門家と一緒に整理するプロセスです。
この制度を利用することで、費用や手続きの不安も含めて相談できます。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りましょう。

中絶以外に考えられる選択肢

出生前診断でダウン症の可能性を示されたとき、中絶だけが選択肢ではありません。
出産を選ぶ方も多く、公的な支援制度も整っています。
選択肢を広く知ることで、後悔の少ない意思決定につながります。

出産を選択するケース

ダウン症の確定診断が出ても、出産を選ぶ方は少なくありません。
厚生労働省の専門委員会報告書によると、医療の進歩により21トリソミー(ダウン症)の平均寿命は約60歳まで延長しています。
書道家やダンサーとして活躍している方も存在します。
出産を選んだ場合、医療・療育・福祉のサポートを受けながら子育てができます。
不安な気持ちは当然ですが、「今すぐ答えを出さなければ」と焦る必要はありません。

支援制度やサポートの活用

ダウン症のある子どもを育てる場合、さまざまな公的支援を活用できます。

  • 療育手帳:知的障害があると認められた場合に交付され、障害福祉サービスの利用につながります。
  • 特別児童扶養手当:20歳未満の障害のある子どもを育てる保護者に支給されます。
  • 児童発達支援・放課後等デイサービス:未就学児から学齢期まで、療育や集団生活への適応訓練を受けられる通所型の支援です。
  • 小児慢性特定疾病医療費助成制度:心臓疾患など特定の慢性疾患の治療費を助成する制度です。

日本ダウン症協会(JDS)では、ダウン症のある子どもを育てる親による電話相談も受け付けています。
同じ経験をした先輩保護者の声を聞けることは、大きな支えになるでしょう。

後悔しないための判断の考え方

どんな選択をしても、後から「あのときこうすればよかった」と感じることはあります。
大切なのは、十分な情報をもとに自分とパートナーが納得して決めることです。
そのための考え方を整理します。

パートナーや家族との話し合い

中絶か出産かという判断は、一人で抱えるには重すぎます。
パートナーや信頼できる家族と、できるだけ早めに話し合うことが大切です。
話し合いのポイントは3つあります。

  • 「今どんな気持ちでいるか」を正直に伝え合うこと
  • 「どんな情報が足りないか」を整理すること
  • 「今すぐ答えを出さなくていい」という前提で話すこと

感情が高ぶっているときは、まず感情を吐き出す時間を確保してください。
具体的な判断は、落ち着いてからのほうが後悔が少なくなります。

情報収集と意思決定のポイント

インターネット上には不正確な情報も多いため、厚生労働省などの公的機関や認証を受けた医療機関の情報を優先して参照しましょう。
意思決定に「正解」はありません。
自分とパートナーが十分に話し合い、納得できる選択を目指してください。
判断に迷ったときは「誰かに決めてもらう」のではなく「自分で決めるための情報を集める」という姿勢が大切です。

中絶にかかる費用や負担

中絶手術には、身体的な負担だけでなく、経済的・精神的な負担も伴います。
費用は妊娠週数によって大きく異なるため、早めに把握しておくことが安心につながります。

中絶費用の目安

中絶手術は原則として保険が使えず、全額自己負担です。
費用の目安は前述の比較表をご参照ください。
中期中絶は入院を伴うため、初期中絶より費用が大幅に高くなります。
入院費・埋葬費なども含まれる点を念頭に置いておきましょう。
費用負担を軽減できる制度が2つあります。該当する場合は積極的に活用してください。

【出産育児一時金】

  • 対象:妊娠12週以降の中期中絶
  • 支給額:1児につき約42万円
  • 手続き:加入している健康保険へ申請

【医療費控除】

  • 対象:指定医師による中絶手術費用
  • メリット:確定申告で手続きすることで、一部の費用が還付される
  • デメリット:1年間の医療費合計が10万円を超えた場合のみ適用。手術費用だけでは条件を満たさないケースもある
  • 注意:領収書を必ず保管しておくこと

身体的・精神的な負担

初期中絶は日帰りで行えますが、中期中絶は数日間の入院が必要です。
術後は安静を保ち、定期的な診察を受けましょう。
精神的な負担も長引く場合があります。
眠れない・食べられない・日常生活が送れない状態が続く場合は、心療内科や産後ケアの窓口への相談を検討してください。

出生前診断に関するよくある質問

出生前診断や中絶について、多くの方が同じ疑問を抱えています。ここでは特に質問が多い3つをまとめました。
気になる項目からご確認ください。

出生前診断は保険適用されますか?

原則として、出生前診断(NIPT・羊水検査・絨毛検査など)は自費診療に当たります。
費用は医療機関によって異なるため、受診前に必ず確認しましょう。
ただし、医師が医療上必要と判断した場合など、例外的に保険適用となるケースも存在します。

陽性だった場合、必ず中絶する必要はありますか?

中絶を選ぶかどうかは、完全に本人とパートナーの意思によります。
陽性の結果は中絶を強制するものではなく、あくまでも「判断材料」の一つです。
出産を選ぶ方も多くいます。

出生前診断は誰でも受けられますか?

NIPTは、出産予定日時点で35歳以上の方や、2親等以内に染色体異常のある方などが主な対象とされてきました。
ただし、医療機関によって受診条件は異なります。
受診前に、かかりつけ医や専門クリニックへ確認しましょう。

出生前診断と中絶について理解し、自分に合った選択を考えよう

この記事では、以下のポイントをお伝えしました。

  • 法律上の中絶の条件:母体保護法では胎児の異常だけを理由にした中絶は認められていないが、精神的・経済的負担を理由とするケースで認められることがある
  • 中絶の期限:妊娠21週6日まで。中期中絶は身体・精神・費用の負担が大きい
  • 検査の正確性:スクリーニング検査は「確率」を示すものであり、確定診断(羊水・絨毛検査)が必要
  • 選択肢は中絶だけではない:出産を選んだ場合も、公的な支援制度を活用できる

次に取るべき行動は、まず担当医に連絡して「遺伝カウンセリング」を予約することです。
情報を整理し、パートナーや家族と話し合う時間を確保してください。
どんな選択をするにしても、それはあなたとご家族が考え抜いた答えです。
一人で悩まず、専門家の力を借りながら、納得のいく選択に向けて一歩ずつ進んでください。

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監修医師
赤松 敬之
赤松 敬之
医療法人星敬会 西梅田シティクリニック 理事長
平成25年3月 近畿大学医学部卒業。平成26年4月から済生会茨木病院にて内科、外科全般の研修を行う。平成28年4月より三木山陽病院にて消化器、糖尿病内科を中心に、内視鏡から内科全般にわたり研鑽を積みながら勤務。「何でも診る」をモットーに掲げる病院での勤務の中で、働き世代の忙しい方が通いやすいクリニックを目指し、令和2年9月西梅田シティクリニック開設。
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