中絶の知識

今、日本で中絶をする人はどのくらいいる?

赤松 敬之(あかまつ たかゆき)

日本で中絶している方の件数は全体的に減少傾向にあります。
しかし、年度によっては、特定の年代で件数が上昇していることもあります。

これには、妊娠に対する知識の欠如や価値観・思い込みなどが影響し、望まない妊娠を引き起こしているケースがあるでしょう。
本記事では、日本で中絶をした人のデータを取り上げながら、望まない妊娠を避けるための方法・心構えについてご紹介します。

妊娠は、パートナーとの同意のもと起こるべきものであり、望まない妊娠は避けるべきです。
後悔しない人生を送るために、妊娠についてパートナーとしっかり話し合いながら、お互いの合意のもと適切な決断をしていきましょう。

人工妊娠中絶件数は過去10年で減少傾向に

厚生労働省の報告によると、人工妊娠中絶件数は過去10年で減少傾向にあります。
2017〜2021年までの期間における人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移によると、中絶件数の総数は以下のとおり推移しています。

各年度総数
平成29年度(2017年)164,621件
平成30年度(2018年)161,741件
令和元年度(2019年)156,429件
令和2年度(2020年)141,433件
令和3年度(2021年)126,174件

年齢別でみると、20歳未満の中絶実施率は平成13年(2001年)でピークになりましたが、以降は減少傾向で推移しているのが特徴です。

令和3年(2021年)の年齢階級別にみた人工妊娠中絶実施率(女子人口全体)では、以下の結果が出ています。

年齢別実施率 (令和3年/2021年)
20〜24歳10.1
25〜29歳8.4
30〜34歳7.3
35〜39歳6.5
20歳未満3.3
40〜44歳3.0
45〜49歳0.3

年代順では20〜24歳、25〜29歳、30〜34歳の順で若い年齢層を中心に中絶実施率が高くなっています。

未成年の中絶件数は上昇傾向に

令和3年(2021年)までは減少傾向だった未成年の中絶件数ですが、令和4年(2022年)には上昇しているデータが発表されました。
令和3年における20歳未満の中絶件数は9,093件だったのに対し、令和4年では9,569件に、1年で476件も増加しているというデータが報告されました。
また、15歳未満では22件、15歳では10件、19歳では569件も増加している結果が出ています。
未成年による中絶を防ぐための対策が重要であることが浮き彫りになっています。

40代の中絶件数は10代よりも多い?

厚生労働省の令和4年(2022年)の報告によると、20歳未満の中絶件数が9,569件であるのに対し、40〜44歳の中絶件数が11,079件になっており、未成年よりも40歳を超える女性のほうが中絶件数が多いデータが出ています。

この背景には、40歳以降になると、妊娠する可能性が低いと高をくくっている女性が一定数いることが考えられます。
40歳を過ぎて閉経するまでは自然妊娠の可能性が低いと思い込み、避妊対策を疎かにしてしまった結果、妊娠につながったケースが報告されているのです。

また、コンドームをつけることを嫌がる夫の気持ちを優先し、避妊ができずに妊娠につながった事例もあります。
すでに子どもがいる家庭の場合、経済的な理由や仕事などの兼ね合いで子どもを増やすことが難しく、中絶に踏み切るケースがあります。

40歳以降になると、「腟外射精をすれば避妊になる」と思い込み、コンドームを使用した避妊対策が徹底できない場合があるようです。
実際は、腟外射精をしても妊娠につながるケースはあります。
射精前の段階で分泌液には精子が含まれているため、受精につながる可能性があるからです。

また、40代以降のピルの服用は血栓症のリスクが高まるとされているため、使用できないケースがあります。
このような背景から、コンドーム以外の避妊方法をとる女性が少ないことが考えられます。

望まない妊娠をしないために

望まない妊娠をしてしまった経緯として、パートナーに本心を言えずに避妊できなかった事例が挙げられます。
パートナー間で十分にコミュニケーションがとれず、相手の言いなりになってしまい、コンドームの使用ができずに妊娠につながってしまうケースがあるでしょう。

確かに自分の意見を相手に伝えることは、ときに勇気がいることかもしれません。
場合によっては口論に発展し、関係が悪くなることを恐れる方もいるでしょう。
しかし、大切なのは、どういう未来を送りたいかを考えることです。
望まない妊娠をして、理想の生活が送れないのであれば、避妊をするべきです。

目指すべき家庭像について、パートナーとしっかり話し合い、お互いのイメージをすり合わせておくことが求められます。
話し合いの結果、パートナーとどうしても折り合いがつかない場合は、友人や知人、専門機関に相談するのも1つの手段です。
現状の問題から目を背けることなくしっかり向き合いどうしたら事態が改善するかを考え、行動していきましょう。

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監修医師
赤松 敬之
赤松 敬之
医療法人星敬会 西梅田シティクリニック 理事長
平成25年3月 近畿大学医学部卒業。平成26年4月から済生会茨木病院にて内科、外科全般の研修を行う。平成28年4月より三木山陽病院にて消化器、糖尿病内科を中心に、内視鏡から内科全般にわたり研鑽を積みながら勤務。「何でも診る」をモットーに掲げる病院での勤務の中で、働き世代の忙しい方が通いやすいクリニックを目指し、令和2年9月西梅田シティクリニック開設。
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