リプロダクティブ・ヘルス/ライツというものを知っていますか?
性や身体のことで思い悩んだ経験はないでしょうか。
誰にも相談できず、ふさぎ込んでしまう方もいるかもしれません。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツは、このような悩みを抱える女性を救うための思想です。
本記事では、リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する国内外の取り組み事例や課題、今後の展望について解説します。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは
リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは、直訳すると「性と生殖に関する健康と権利」を指します。
1994年にエジプト・カイロでおこなわれた国際人口開発会議で提唱された概念です。
女性のライフサイクルを通じて、性と生殖に関する生命・健康の安全を権利として捉えるものであり、近年の女性の人権において重要な概念の一つとされています。
「リプロダクティブ・ヘルス」「リプロダクティブ・ライツ」におけるそれぞれの定義は以下のとおりです。
- リプロダクティブ・ヘルス
出産や性に関するすべてのことに関して、心身ともに本人の意思が尊重され、自分らしく生きられること。 - リプロダクティブ・ライツ
自身の身体に関することを自分で選択・決断する権利のこと。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツは、妊娠・出産・中絶・避妊・不妊・思春期の問題・更年期障がい・性感染症・性暴力など、あらゆる問題を含みます。
自分らしく生きるために、心身を大切に守り、家族や大事なパートナーにもその大切さを伝えていくことが大切です。
日本の取り組みと海外の取り組みについて
日本と海外におけるリプロダクティブ・ヘルス/ライツの取り組みを解説します。
日本におけるリプロダクティブ・ヘルス/ライツの取り組み
日本では、コロナ禍で若年層の妊娠に関する相談が増えたことをきっかけに、緊急避妊薬の薬局販売を目指す「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」が2020年に始動しました。
緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクトのおもな活動内容は以下のとおりです。
- 薬局における薬剤師の対面販売を通じて、緊急避妊を求める女性が購入できるようにするために、署名キャンペーンを展開する
- 性の健康に関することや緊急避妊薬に関する啓発資材を開発・提供する
- 厚生労働省に対し、緊急避妊薬へのアクセス改善を求める要望書を提出する
また、2022年4月より、これまで全額負担となっていた人工授精・体外受精・顕微授精などが保険適用(3割負担)となり、金銭的な負担が軽減されるようになりました。
さらに、経済的な理由によって生理用品を入手できない方に対して、地方公共団体では生理用品の無料提供などの取り組みもおこなわれています。
海外におけるリプロダクティブ・ヘルス/ライツの取り組み
海外では、安価・無料で避妊具が提供されるといった取り組みが進んでいます。
たとえば、フランスでは2022年1月に避妊リング(IUD)や低用量ピルなどが無料になる女性の年齢制限が18歳から25歳に引き上げられました。
また、2023年には年齢制限を撤廃し、緊急避妊薬の無償化の対象が全年齢の女性になりました。
避妊法においても、避妊パッチ・避妊注射・避妊インプラント・腟リングなどの方法が採用されています。
幼少期からの人権教育として、幅広く体系的に学べる性教育(セクシュアリティー教育)を必修教育として導入している国が増えています。
スウェーデンでは、若年層が気軽に性の悩みを医療従事者に相談できるユースクリニックと呼ばれる機関が250箇所程度あるのも現状です。
このように若い女性の性の悩みを解決するためのサポート体制が充実しているのが特徴です。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツの課題とこれからの展望
リプロダクティブ・ヘルス/ライツの課題として挙げられるのが、性差別・性暴力などの問題です。
2024年現在では、宗教や政治的理由によってリプロダクティブ・ヘルス/ライツの思想に反対する声があります。
そのため、未だに各国では、性教育・緊急避妊薬のアクセス・避妊における選択肢・同性婚や性的マイノリティーの権利保障などにおいて、さまざまな問題があります。
このような問題に対する解決策として挙げられるのが、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの認知拡大です。
政府・医療・福祉・教育・市民社会が連携し、それぞれの専門領域を活かした啓蒙活動をおこなうことが求められます。
とくに知識や経験が不足する若者に対し、性に関して啓蒙する機会を提供したり、若者自らが気軽に相談できる機会を作り上げたりすることが重要です。
日本では、まだまだ性の権利や健康に関して、保障されていない部分があります。
今後、海外事例など参考にすべての世代の女性が生きやすい世の中になるよう、社会全体がリプロダクティブ・ヘルス/ライツの課題に向き合うことが求められます。