中絶の知識

中絶を選んだその先は?女性が直面する心と体のケア不足

赤松 敬之(あかまつ たかゆき)

中絶を経験したことのある女性の中には、心身ともに疲弊し、苦しんだ方がいるかもしれません。
本記事では、中絶手術後女性が直面する困難や、必要とされるケアについて解説します。
中絶手術を経験したことのある女性はぜひ参考にしてください。

中絶後に起こる心と体の変化とは?見逃されがちな女性の声

中絶手術は女性の心身に大きな負担をもたらします。
一般的に行われる吸引法は、短時間で実施可能な一方で、子宮内膜を傷つけるリスクが伴います。
また、妊娠が中断されることにより、精神的な負担を感じる女性も少なくありません。

しかし、こうした女性の声は十分に取り上げられないことが多いのが現実です。

その背景には、「中絶に対する罪悪視」が関係しています。
「中絶は悪いこと」と考える風潮、社会的な価値観が影響していると考えられます。
結果として、中絶を経験した女性の気持ちが軽視され、適切なサポートを受けにくい状況が生じてしまっています。

中絶後のサポートが不十分な理由

中絶後、女性が医師や看護師に相談することをためらい、サポートを十分に受けられないケースが見られます。
その要因の一つとして、中絶に対する社会的な偏見が挙げられます。
呼応性・汚名への心配の例・中絶当事者が感じる医療従事者への印象は以下のとおりです。

中絶後のサポートが不十分な背景中絶当事者が感じる医療従事者への印象
医師に対する呼応性への心配・医師は相談した問題を理解、解決できない
・医師に相談すると悪い影響が出る
・医師は医療者なので、人工妊娠中絶を受けた女性の問題は理解できない
看護師に対する呼応性への心配・看護師は相談した問題を解決できない
・看護師は相談した問題を理解してくれない
・看護師は人工妊娠中絶を受けた女性の問題は理解できない
医師に対する汚名への心配・医師に相談した問題のある女性だと思われる
・医師に相談したら特別扱いされる
・医師に相談に乗ってもらう価値のない人間だ
・自分で問題解決できない弱い人間と思われる
看護師に対する汚名への心配・看護師に相談したら特別扱いを受ける
・看護師に相談していることを友人が知ったら友達を失う
・自分で問題解決できない弱い人間と思われる

こうした不安を軽減するためには、事前にどのようなサポートがあるのかを知っておくことが大切です。
また、中絶後に抱える不安や心の揺れは自然なことであり、自分を責める必要はないということを意識することも重要です。
つらい気持ちを一人で抱え込まず、信頼できる人に話すことで、心理的な負担を少しでも和らげることができます。

中絶後に必要なカウンセリング

中絶を経験した女性の中には、うつ病外傷後ストレス障害(PTSD)不安障害を発症するケースがあります。
特に、過去に精神疾患の既往歴がある場合は、再発や悪化のリスクが高まるため、専門的な心理カウンセリングが必要になることもあります。

必要に応じて主治医から心療内科や精神科を紹介してもらい、適切なサポートを受けることが大切です。
精神疾患に至らない場合でも、日常的な不安を軽減するために精神保健福祉センターを利用するのも一つの方法です。
カウンセリングは心の安定を保つための有効な手段です。
自分の気持ちを整理し、健康的な生活を維持するためにも、積極的に活用することが望ましいでしょう。

中絶後の身体のケアが重要!再妊娠や健康への影響を防ぐために

中絶後の体はデリケートな状態にあるため、適切なケアを行うことが重要です。
再妊娠や健康への影響を防ぐためにも、以下の点に注意しましょう。

中絶後に実施すべきケアケアに関する心構え
帰宅後の安静期間に関して2〜3日の自宅安静が必要。
期間中は、車の運転を禁止し、なるべく仕事をしないことが大切。
(座って取り組める仕事であれば問題ないこともある)
手術後の入浴に関して手術当日の入浴は不可。
出血や痛みが和らぐまでに7〜10日間かかるため、翌日から1週間はシャワーのみとする。
手術後の衛生管理について手術後は感染防止の観点から、出血が和らぐまでタンポンなどの使用を控え、清潔なナプキンを使用する。
服薬について抗生物質は、感染症の感染や子宮の収縮を防止するために必要。
処方された場合は、決まった日数分を飲みきる。

社会に求められるサポートとは?中絶後ケアを充実させるためにできること

人工妊娠中絶を経験した女性の中には、家族や友人からの支援を受けられる人もいれば、孤立してしまう人もいます。
適切なサポートを受けられず、一人で悲しみを抱え続けるケースも少なくありません。

こうした状況を防ぐためには、中絶を経験した女性が安心して話せる環境が必要です。
信頼できる人に相談することや、同じ経験を持つ人の体験談を知ることで、気持ちが軽くなることもあります。
また、医療機関や専門の相談窓口を活用し、自分に合ったサポートを受けることが大切です。

社会全体としても、中絶を選択せざるを得なかった女性に対する理解を深めることが求められます。
偏見をなくし、誰もが安心して相談できる環境を整えることで、心身の回復を支えることができるでしょう。

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監修医師
赤松 敬之
赤松 敬之
医療法人星敬会 西梅田シティクリニック 理事長
平成25年3月 近畿大学医学部卒業。平成26年4月から済生会茨木病院にて内科、外科全般の研修を行う。平成28年4月より三木山陽病院にて消化器、糖尿病内科を中心に、内視鏡から内科全般にわたり研鑽を積みながら勤務。「何でも診る」をモットーに掲げる病院での勤務の中で、働き世代の忙しい方が通いやすいクリニックを目指し、令和2年9月西梅田シティクリニック開設。
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